連大修了生へのインタビュー

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岩手連大では、初めての試みとして、これまで連大を修了した学生に対してインタビューを行いました。

目的としては、

  1. これから博士課程に進学を考えている学生が、入学前に修了後の選択肢を具体的に描くことができる一助になること
  2. 現在博士課程に在学する学生に対しても、近い将来の修了後の進路を具体的に考えてもらう材料となること

を期待して行いました。

今回、2名の修了生(日本人学生、留学生)に対してインタビューを行い、お二人から連大を進学先として選んだ経緯、在学中に苦労したこと・印象に残っていること、今のキャリアを選んだ理由等、なかなか聞くことができない貴重なお話を伺うことができました。

今後も岩手連大では、世界を舞台に活躍している様々な修了生からお話を伺うことで、岩手連大に進学を考えている学生さんや現在岩手連大で日々研究に奮闘する学生さんをサポートしていければと考えております。

インタビューした連大修了生の概要について

左:上村岩手連大農学研究科長 右:連大修了生 及川愛さん
左:上村岩手連大農学研究科長 右:連大修了生 及川愛さん

氏名:及川 愛(おいかわ あい)さん
専攻(配属):生物資源科学(岩手連大配属)
修了年:2008年3月

以下、2019年6月25日にサンフランシスコ市内で行われた上村岩手連大研究科長と及川愛さんとのインタビューになります。

Q:上村岩手連大農学研究科長
A:及川さん

岩手連大に入学したきっかけは何ですか?

大学一年生の時から博士課程に進むと決めてたのですが、始めは国外の博士課程に進もうと思っており、修士の時に上村先生に海外の博士課程に進みたいんですがどこかいいところはありませんかということをお聞きしました。

覚えてます。

その時に受けたアドバイスは、どうやら大変みたいだと。大変というのは、金銭面や修了までの長さが、日本の大学よりもかかるらしいと。今はその意味がよく分かるのですが、そういうアドバイスを受けながら、岩手連大は身近にあり、先生方や研究員の方々からのサポートや学生同士のチームワークにも魅力を感じていたので、結局は岩手連大に入学をしました。

在学時代、どのような研究を行っていましたか?

大麦の発酵に関する発芽種子の研究を行っていました。2004年からのCOEプロジェクトのおかげでより充実した研究を行うことができました。

在学時代、一番思い出に残っていることは何ですか?

たくさんありすぎて、一つに絞るのはなかなか難しいんですが(笑)、学会のポスターセッションに参加する際、肝心のポスターを忘れてしまったことや、Yale大学へ短期研究留学生として植物生理学会から、奨学金をもらっていくことができたこと、学生同士の縦横の繋がりが密で多くの場面で助け合ったこと、「一体感」がありました。本当に連大時代はいろんなことがあって、どれもがいい思い出です。

在学中、これがあればよかった等、岩手大学への要望があればお願いします。

情報を簡単に得ることができる、ウェブサイトがあればよかったと思います。連大だけではなく、他大学の学生とコミュニケーションを取ることができるネットワーキングのようなスペースがあればよかったと思います。ただ、その時はインターネットもそれほど発達していたわけではなかったので、仕方がないかなとも思いますが…。

博士課程に進学するにあたり、金銭的な面で進学を断念する学生は少なくないと思いますが、進学するにあたり、その辺の不安は、及川さんはありませんでしたか。

経済的な不安はやはりありましたが始めから博士課程進学を目指していたので、博士まで進学した場合の費用がどれくらいかかるのか、自分で調べていました。その費用を賄うために奨学金を借りて費用を工面し、金銭面での不安定性を軽減できました。また奨学金は非常に低利子ですので、全部の費用を博士修了後の五年間ほどで返すことができました。奨学金制度や博士がなければ、修了後から今までここ(カリフォルニア)で働くことはきっとなかったので、制度に感謝していますし、時間的にも経済的にも良い自己投資をしたと思っています。

社会人になって、在学中にもっとやっておけばよかったこと等、後輩にアドバイスできることは何かありますか?

やりたいことがあれば素直にやってほしいと思います。たまにはバカ(?)になって(笑)、やりたいことを思い切ってやってほしいと思います。私にとっては、そういった経験が自分を変える力になってきたのではないかと思います。

事前にいろいろ考えることも(経済的なことやその他の環境等)もちろん大切なことですが、やってみてから考えることも時には必要なことなのではないかと思います。

岩手連大を修了後、現在カリフォルニアでご活躍されていますが、どのようなきっかけでここで暮らすことになったのですか?

連大の先生(ラーマン先生)が、私が就職活動を当時していたことをご存じで、その先生が進めてくださったのが、カリフォルニアにある研究施設でした。特に知り合いもいない状態で、またその研究施設が具体的に何をやっているかも分からない状態でしたが、結果的に応募から採用までのプロセスも早かったというのが大きかったかなと思います。もちろん他にも応募していたところはたくさんあったのですが、他はプロセスに時間がすごくかかっていたので、結局はこちらを選びました。就職活動は大変でしたが、いろいろな先生方の助けのおかげで、何とかすることができました。

また、「やりたいこと(発酵)ができる環境があった」というのが、現在もここ(カリフォルニア)にいる理由かなと思います。

現在及川さんは、会社(AFINGEN, Inc. : www.afingen.org)を創っていますが、そこにいたるまでの過程は大変だったのではないかと思うんですが、実際どうして会社を興したのですか。

技術ができても商業化してくれる人がいなかったというのが一つの理由です。せっかくいい技術が出来ても、論文で終わってしまうことが何か寂しくて。また、アメリカはそれ(商業化)をサポートする体制が整っているというのがもう一つの理由です。

会社を起こすにあたって、ビジネスや法律を専門とする人と交渉するのは大変だったんじゃないですか。

そうですね、まず私自身にビジネスや法律のボキャブラリーがないことが大変でした笑。それぞれの専門家の方が何を話しているか分からないというか。たた、何回も何回も聞いているうちに慣れてくるというか。習うより慣れろという感じでいけたので、おかげさまで効率的に勉強することができました。

日本の大学でも研究がビジネスにどう結びつくのかということを話した方がいいということを言われるのですが、それについては及川さんはどう思いますか。

必要だと思います。特に博士の時にはすごくいい影響力になってくると思います。自分がやっていることが最終的にどういう方向に向かっているのか、どうしても見失いがちになるので、そういった関係の人の意見を聞きながら軌道修正していくというのは、効率的であり、また実社会に役立つインパクトのある研究に繋がっていくと思います。

大学も外に対してそういうことをアピールしながらやっていかないと、今後生き残っていけないのかもしれませんね。
岩手連大に現在進学を考えている学生さんへ、何かメッセージがあればお願いします。

博士課程への進学を希望していて、もし経済的な事情等で進学を諦めるのであれば、それを理由にしてほしくないと、個人的には思います。自分が学生の時は気付かなかったんですが、日本の大学の授業料免除制度や奨学金の制度は、世界規模で見ると日本は充実していると思うからです。

また、日本だけの大学を見ると、岩手連大の学力的な序列は低いかもしれませんが、連大を修了した今、それはあまり意味をなさないことだと思います。というのも、外国の人から見て、例えば岩手大学と東北大学、東京大学の違いが分かる人はそれほどいません。こちらではHarvard大学やMIT、StanfordやUC Berkeleyなどのアメリカ東海岸や西海岸の有名な大学を出ている人が一番と思われています。なので、「日本にいたとき、岩手にいたときの物差しというのは、世界の人から見た物差しではない」ということなんです。一度外に出てみないとその物差し自体が分からないので、思い切って外に出てみるということは大事なことなんじゃないかと思います。連大に入っていなければ、それを感じることはできなかったので、連大をお勧めする理由かなと思います。

現在博士の学位を取得するために、日々奮闘している後輩へメッセージをお願いします。

あきらめずにやりたいことを思い切ってやってほしいと思います。やる前にいろいろ賢く考えることや心配することもちろん大切なことかもしれませんが、失敗を怖がらず、若さや直感を武器に思い切ってやってみてそれから考える、若い時にだけ出来る失敗をできるだけたくさんすることも、将来的な成功には必要なことなのではないかと思います。応援しています。

5年後10年後の自分はどうなっていると思いますか。

中国にいると思います(即答)。アメリカに今いますが、やりたいことがあってアメリカにいるだけであって、決してアメリカにいたいという訳ではないんですね。

自分がやりたかった「発酵」というキーワードをやれる環境が中国にあるので、中国語を習って今後は中国でビジネスをしたいと思っています。

アメリカと中国それに日本の懸け橋に「科学」という分野から少しでも貢献できればいいと思っています。

分かりました。楽しみですね笑。今日は、お忙しい所貴重なお話をありがとうございました。

ありがとうございました。